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【科学コミュニケーション】認知症のなりやすさはアポリポタンパク質Eの多型を調べることでわかる

さきほどご紹介した石浦章一さんからは,政策研究大学院大学の隅蔵さんの人選
がよかったためか,ほかにも興味深い話を多く聞けました.

そのひとつが,認知症(アルツハイマー病)のなりやすさは,アポリポタンパク
質E(略してアポEといいます)の遺伝子の個人差(多型)を調べることによっ
てわかるという話.アポEの多型でE2型とE2型との組み合わせの場合,認知
症になる確率が有意に高く,バイオバンク計画を実施しているイギリスの場合,
この組み合わせの多型をもつ方は,サッカーやボクシングなどのハイリスクの接
触スポーツに従事することができないのだそうです.石浦さん曰く,国家として
遺伝子診断をやる必要はないが,個人の任意の判断で(ただし家族全員が遺伝子
情報を共有するということを前提のうえで)遺伝子診断を受けて,たとえば認知
症のなりやすさをあらかじめ知っておき,必要に応じて生活習慣を変えて発症を
抑えるのがよいのではないかとのこと.

アイスランドのバイオバンク事業も,必ずしも医療政策としてはうまくいってい
ませんし,最終的には家族をまきこんだ個人の判断で遺伝子診断を受けるかどう
か決めたらよいということのようです.国全体として遺伝子多型をしらべるのは
究極の個人データの管理をどうするかという以前に,医療制度をコスト面で改善
するという意味において,却ってマイナスにはたらくそうです.

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ところで,石浦さんが東北農研センターで閉鎖系実験をおこなっている,認知症
を「食べて治す」Aβ発現イネについて,どう思われますか? 既に,マウスで
はAβを抗原として投与し,体内で抗Aβ抗体を産生させることによって認知症が
治せることを確認されたそうです.


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コメント 2

Paco

私はこの辺りよくわからないのですが、遺伝子を調べるのは結構費用がかかるのでは?日本では、まだ、気軽に「調べてください」とお願いできないですよね。家族全員の遺伝子情報を共有できるというのは、日本では遠い将来のような気がしました。
認知症を食べて治すんですか?すごいですね。食べることがどのように機能するのか知りたいです。
by Paco (2007-09-23 10:09) 

K_Tachibana

遺伝子を調べるのは,たとえば石浦さんの研究対象であるアポEの遺伝子型をしらべるだけなら1万円もあればできるそうです.しかもサンプルは髪の毛3本もあればいいそうです.

個別化医療で全ゲノム配列を網羅的に調べるというのは,きわめて打算的ですが,採算コストにみあわないので日本では国家としてやることはないだろうというのが石浦さんの弁.
そういうちょっと離れた目線で見られるのは,中村祐輔さんらのように直接自分たちの研究プロジェクトの予算獲得とリンクしていないからでしょうね.

認知症を「食べて治す」話は,マウスでは既に有意な結果が出ていて,写真も見せていただけました.ヒトにおける臨床例はまだないです.隔離圃場で遺伝子組み換えのAβ発現イネを栽培している段階なので,流通チャネルに載るのは先の話になると思います.同じような発想でつくられた「花粉症緩和米」などもありますね.
by K_Tachibana (2007-09-23 10:40) 

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