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【閑話休題】知識の細分化と全体のレビューの必要性

23日付の日経産業新聞のTechno onlineで,興味深い記事が掲載されていた.
見出しには「理科離れ深刻に 全体像示し好奇心刺激を」とあった.

若い世代が,学年を経るにつれ理科が嫌いになる遠因として,知識の断片化,
専門分野のタコツボ化といった高度専門化社会の構造に由来している,と哲学
者のオルテガを引用しながら論じている.

大衆の反逆 (中公クラシックス)

大衆の反逆 (中公クラシックス)

  • 作者: オルテガ
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2002/02
  • メディア: 新書


もちろん,理科の嫌いな学校教員が増えたこともあるのかも知れない(理科の
嫌いな学校教員向けに編まれたのがScience Windowであるらしい).さらに,
薫日記によると,地学のみならず物理までも高校で学ばなくなっているらしい
のだ.私が高校の頃は,ふつうに物理,化学,生物,地学が自由に履修でき,
理系コースでは物理と化学を選択することが標準的だったのだから,驚きだ.

Techno onlineでは,専門細分化された科学技術に挑戦するには全体像と新鮮な
切り口を示す必要があり,それらを分かりやすく話せば若い人たちの知的好奇
心を刺激すると期待される,としめくくっている.

私がサイエンスカフェでレビューにこだわっているのは,まさにそこにある.
たとえテーマに通じていなくても,何かに刺激され,気づきを感じて帰ること
ができれば御の字だと考えるからだ.その場ですべて聞いて覚えて帰ることが
本来の趣旨ではないはず.もちろん,研究者にとっては自分の研究分野の概要
をより多くの方々に周知してもらえれば嬉しいに違いないのだろうけれど.も
っと受け手の立場を考えることが必要だろう.

金曜日の科学コミュニケーションのオフ会では,意外なことにモノづくりの基
本書がよく売れている,という話を聞いた.たとえば,この本だってそうだ.

絵とき「ねじ」基礎のきそ

絵とき「ねじ」基礎のきそ

  • 作者: 門田 和雄
  • 出版社/メーカー: 日刊工業新聞社
  • 発売日: 2007/02
  • メディア: 単行本



絵とき「機械要素」基礎のきそ (Machine Design Series)

絵とき「機械要素」基礎のきそ (Machine Design Series)

  • 作者: 門田 和雄
  • 出版社/メーカー: 日刊工業新聞社
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 単行本



ロボット大図鑑 歴史から最新技術まで

ロボット大図鑑 歴史から最新技術まで

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2007/04/03
  • メディア: 大型本



熱工学がわかる (ファーストブック)

熱工学がわかる (ファーストブック)

  • 作者: 長谷川 大和
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2008/04/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


基本にあるのは物理である.学校できちんと習わなくなったので,基本書でい
ちから必要な知識を得たい,という潜在的ニーズがあるらしい.

私は,必ずしも薫日記で書かれているように物理書が「いらない」ものにはな
らないと思う.むしろ,物理の基礎を学校で学ばなくなっているのに会社など
で基礎知識が要求されるケースが出てきているので,基本書はむしろ学校教育
を補完するという意味からも一般社会人対象のものが求められていると思うの
だ.

関連ブログエントリー:
余計なお世話(Intersecting Voice Cafe-Annex)
物理が絶滅する理由(薫日記)
そして誰も物理を学ばなくなった(薫日記)
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コメント 6

竹内薫

トラバ、ありがとうございます。

ナルホド、高校で物理を教わらなくなったから、逆に社会のニーズとしては物理系入門書が重要になる・・・そういう可能性もありますね。

松井先生の危機感は、相当なものでしたが、数字を調べてみて、自分の危機感のなさに驚き、反省したわけです。

本は、やはり副読本ですから、授業がないというのは響くと思います。
by 竹内薫 (2008-05-25 07:14) 

K_Tachibana

竹内さん
コメントありがとうございます.
いま秋葉原の21世紀の科学技術リテラシーというタイトルのシンポジウムに来ています.ここに集まっている人たちは,危機感もっていらっしゃるのかなあ...

参加者同士の意見交換の場がなさそうなので,なんともいえないのですが.
by K_Tachibana (2008-05-25 09:54) 

hamarie_february

K_Tachibanaさん、トラックバックありがとうございます。

「モノづくりの基本書」のご紹介、ありがとうございます。ワタシもとても興味ありです。「機械要素」「熱力学」とか。業務は技術者のフォローなので、基礎知識が要求されるってほどではないですが、わかっておきたいカンジです。

冒頭に紹介された「日経産業新聞」の記事はどこで読めますか?オルテガの大衆論はネガティブな愚衆のイメージがありますが。

by hamarie_february (2008-05-25 10:55) 

K_Tachibana

hamarieさん
コメントありがとうございます.
「日経産業新聞」の記事はネットには載らないので本紙で読むか,日経テレコンを使うかしかないと思います.今度のカフェのときにもって行きますので,参考になさってください.
by K_Tachibana (2008-05-25 10:59) 

KADOTA

こんにちは、気づくのが遅れました。ご紹介いただき、ありがとうございます。私が書いている工学の入門書は、一般的な科学リテラシーというよりも、専門的な知識や技術を習得しようという人のための入門書、すなわち、それに関する職業と密接に結びつくような位置づけです。力学も純粋になぜ?と問うのではなく、機械力学、流体力学、熱力学というような視点から、ものづくりにどう関係するのかを意識して書いています。

大学生が物理や数学Ⅲ(微分・積分)を学ばずに工学部に進んでいることは残念ながら当然のことなので、私の本もそこからさかのぼって書いています。それでは、また。
by KADOTA (2008-06-15 18:41) 

K_Tachibana

KADOTAさん
コメントありがとうございます.
KADOTAさんの書かれているのは実用書なので,やはり専門的な知識や技術を習得するためにはどのような書き方をすればよいのか,というバックキャスティング的なアプローチが重要なのですよね.
市場のニーズは高いのではないかと思います.
by K_Tachibana (2008-06-16 23:59) 

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